(以下敬称略)
バーのセットに、やしきたかじんがカウンターの中にいて、桂ざこば、女性アナウンサー、辻本(吉本新喜劇)、女性歌手、女性タレントが座っていて、お客さんが入っている。
女性アナウンサー「僕がハンバーガーを食べないわけ」
(会場拍手)
たかじん「確か、18(歳)になるまでに、自分とこ、会社やってたんです」
女性タレント「お家?」
たかじん「家が。まあ、従業員の方が、例えば、200人とか、300人とか、400人とか、居はったんです」
女性「すごい」
辻本「坊々やったんですか?」
たかじん「(うなずく)でもね、ある日ね、あの、倒産みたいになって、で、その時、俺、決めてん。一人でやれることやりたい。アカンかった、一人。良かっても、一人。ほんで、あの、歌をね、作り始めてん。高校生、初めて。ほんで、歌いっぱい作って、親父にある時に、呼ばれて、『君な、どうすんねん』(って)。また会社やっとってん、親父。ゾンビやから。『あの、歌、唄いたいんです』(そしたら)『君はな、人前でチャラチャラ出て、なんか訳の分からん歌唄って、お金もらう?お前は、何でもないわ』って。意味分からへんやん?」
全員「(うん)」
たかじん「ほんで、寝て、起きたら、母親が、何かボストンバックにいっぱい、下着とか、入れてる。『お母さん、何してんの?』って言うたら、『昨日、あなた、お父さんから出て行けって言うた(言われた)でしょ?』『えっ』冗談って思うやん」
全員「(うん)」
たかじん「『あれ、冗談やろ』『ううん、もう私に(とって)も、子でも何でもないから、出て行って』そんで、俺は、それ持って、途方に暮れて出て行ってん。どこ行くねん、これ。で、丁度、友達がみんな、大学で京都、いっぱい通っとったから、寝るとこやんか。ほんで、京都に行ったわけよ」
たかじん「で、小さい寺の中に、下宿、三畳一間、借りて、じゅうたん引いて、ピアノ買うて。で、お金ないから、下宿、俺以外に三人おってんけど、もう人間って食べられへんって分かったら」
女性「動かない?」
たかじん「じっとしてんのよ」
全員「(笑)」
たかじん「ほんならね、隣の人がね、『君な、僕の知っているハンバーガー屋あるから、(夜もやるから、ハンバーグもやんねん。)夜も、ステーキ出すから、そこで歌、唄えへんか』って言われて」
ざこば「(うん)」
たかじん「行ったんです」
女性「(うん)」
たかじん「南座の向かいの。今はもうないですよ。そこに行ったんです」
ざこば「おお」
たかじん「で、そこで初めて会うたんが、佐々木さん、いう人で。京都の先斗町の『まめろく』いう大看板の芸者さんの息子さん。その、マスターが」
ざこば「ほお」
たかじん「そのマスターは、後で分かってんけど、同志社大学行っているときに、全日本、フィギュアのチャンピオンになって、エール大学いうところに留学しはって。アメリカ行って、美味しい食べ物を知る」
ざこば「(うん)」
たかじん「ハンバーガー」
全員「(おお)」
たかじん「ほんで、帰って来はって、東京のホテルオークラに勤めはって。でもやっぱし、あの食べ物を自分はやりたい。マクドナルドよりずっと前ですよ」
全員「(ほお)」
たかじん「ほいで、ずっとやって流行って。藤井大丸っていうところあんねんけど、そこにも支店出して、いはったときに、マクドナルドが来たんです。それも同じ藤井大丸にオープンしたんです。あっという間に潰れました。で、夜もステーキ出して、そういう衣替えしやなアカン、生き残って行くためには。それで、私、呼ばれて行ったんです」
全員「(うんうん)」
たかじん「(佐々木さんは)スキッとした人でね、うん。なんて言うんかな、ああ、アメリカから帰って来たな、みたいなね」
全員「(おお)」
たかじん「しゃきっとした(人で)。この人が、初めて僕のこと、じんちゃんって。『お前もう、たかじん(やなくて)ええやろ』『じんちゃん、がんばっとれよ、お前な、歌唄って、がんばれよ』って。で、僕は、昼は、ハンバーガーをこうやって(捏ねる手つきをしながら)作るわけです。いつも、朝礼があるんです。『朝礼!』朝礼って三人しか居らんのです」
全員(笑い)
たかじん「『朝礼!』何があるんかなって思ったら、『あのな、じんちゃんな、ハンバーガー食べ放題や。ビール飲み放題や。乾杯!』そんな朝礼どこにあんねん!」
全員(笑い)
たかじん「一年間、ハンバーガーばっかり食べて。俺、55kgやったんです。一年で10kg肥えました」
全員「へえ」
たかじん「ハンバーガーばっかり食べて。これがね、またね、美味しいのよ」
女性タレント「飽きないんですか?」
たかじん「飽きない。毎日食べんのよ」
全員「ええ」
たかじん「で、夜、歌唄いいな(って)。夜はね、電気暗くするわけや、バーみたいに。ほんで『じんちゃん、歌唄い、唄とて』(って。)こいつなって盛り上げてくれんねん。『こいつ今こんなんやってんねんけど、いつか歌手になりよるねんって』(でも)俺、歌知らんねん、夜の歌なんか。知らんがな。『あの、マスター、歌知らん(のです)』(って言うたら)『ああん、もう。じんちゃん、歌作ってんねんやろ』『はい』『それ、唄ったらええがな』(首かしげて)『誰も知らんと思うんですけど』『かまへん、何言うてんねん、自分の歌唄いいや、伝わるって』って言うてくれはってん。狭い店や。で、俺が、『僕の神経は〜♪三角形になってえ〜♪』って言うたら、(客が)『お前は何を言うとんねん』って」
(歌「夜のピアノ」が流れる)
(僕の神経は〜♪三角形になってえ〜♪尖っているよ、ピ・ア・ノ)
(明子が俺のことを全然 無視したんだよ♪ピ・ア・ノ)
たかじん「ここで客が怒ったがな」
全員(笑い)
たかじん「『お前何を言うとんねん。僕の神経は三角形になって?』そんなら隣に座ってた舞妓が『お兄ちゃん、あのメガネ辞めさせて』って。」
全員(笑い)
たかじん「俺ね、傷ついたわ、16くらいの舞妓に言われて」
女性歌手「でもね、今聞いたら凄くいいですよ」
たかじん「だから、間違いやってん。そういうところで唄うのが。ほんで間違いやって思って、帰って、なんかそんな本買うて来てん。ジャズとか。二曲覚えた」
女性「そういうところで唄えるような」
たかじん「『fly me to the moon』
(fly me to the moon ♪and let me play among the stars♪)
辻本「全然違いますやん!」
女性「おしゃれ」
たかじん「生きるためや!」
全員(笑い)
たかじん「生きるためやったら、唄うわ!だからな、俺な、生きるために唄いたくないねん!だから。コンサートやったら、お客さん来てくれるわけやけど、生きるためだけに俺、歌唄いたくないねん!後遺症や。それで次、『雪が降る』や」
(雪は降る〜あなたは来ない♪)
たかじん「アホやから、この二曲、ずっと順繰りに唄とってん。ほんなら客が、夏やったから『お前は何を言うとんねん。この三十何度あるときに、雪が降る、雪が降るって。何か無いんか?』って」
全員(笑い)
たかじん「ほんなら、しゃあないから『僕の神経は〜♪』って。『もうええ!』」
全員(笑)
たかじん「見とけ、いつかな、歌手になったらあ、ちきしょうって。一人で言うねん。(そしたら)佐々木さんが『じんちゃん、大丈夫やって。お前の気持ちやったら、いつか伝わるって。じんちゃん、ええ歌やねん。関係ないねん、あいつら勝手に言うとんねん。かまへん、かまへん。また唄ったら、かまへんで』って」
ざこば「ほおおっ。。」
たかじん「ほいで、『じんちゃんな、お前コンサートやれ』って。(「えっ」って)日本レンタカーの社長が来とってん。『ゴロウちゃん、ちょっと、こいつな、うちのじんちゃんやけど、スポンサーになったって』って。『おお、ええよ〜』って。初めてのコンサートは、日本レンタカー、主催(笑)」
ざこば「これがチケット(か)」
(チケットが画面に出る)
たかじん「日本レンタカーの方が(文字が)大きいねん。俺の名前の方が小さい」
全員(笑)
たかじん「震えたわ」
女性歌手「そうでしょう」
ざこば「その人はどんな人なんやろうな、スポンサーになったってくれ、コンサートさせたってくれ」
たかじん「佐々木さん?うちのマスターやん」
ざこば「ハンバーガー屋の」
たかじん「うん」
ざこば「それやったら、あんた、ハンバーガー、食べないより、食べなアカンのんちゃうの?」
たかじん「だから」
ざこば「うん」
たかじん「そこのハンバーガー以外は、死ぬまで食べへんって決めてん」
ざこば「ああなるほど、そういうことか」
全員「ああ(拍手)」
たかじん「僕にとってのハンバーガーはその店だけのハンバーガー」
ざこば「そうかそうか分かった(泣)」
たかじん「一生食べへんねん」
ざこば「分かった(泣)」
女性アナウンサー「たかじんさんが働いていたその、ホリデーバーガーで、時を同じくして働いていた方のお話を伺って来ました」
(一緒に働いていた中村さんのVTR流れる)
(VTR終わって)
たかじん「なんか、すっとした綺麗な人がいつも一人でコーヒー飲みに来はるんです。綺麗な人やな、思って。『一回飲みに行きませんか?』言うたら『あんた、何言ってんのよ!』って。(首をふって)『はあ(あかんか)』。。それが最初の僕の嫁さんだったんです」
女性「ええ、素敵」
たかじん「うん。。。(首をふって)この番組、いかんと思うわ。。。(涙声)」
ざこば(下をむいて)
たかじん「死んだから」
ざこば「(以前)話聞いたから。さんざん思い出してまう」
たかじん「僕のな、誕生日に死んでん。。。ふううっ」
たかじん「その頃のこと思ったら、俺は、やっぱり、堕落したわ」
ざこば「そんなことない、それより先に行けへんか」
全員(笑)
たかじん「そうやな、そういう番組ちゃうもんな」
女性アナウンサー「先ほどの中村さんが、あのときのホリデーバーガーの味を再現すべく、」
たかじん「そうやねん、来てくれてん」
女性アナウンサー「十日間掛けて、再現してくれました」
たかじん「ごめんな、ほんまに。来てくれてはってん」
(拍手)
たかじん「(中村さんの今のお店の)いなり寿司めちゃくちゃ美味かったわ」
(ホットプレートが用意されて)
たかじん「ほんなら(みんなに)食べさせてあげる」
たかじん「これをね(ミンチの肉を持って)毎日こうやってやんのよ。ずっとこうやって。こうやってこうやって。うまくなれよ、うまくなれよ、って。はい、行きなさいって」
(肉を焼く)
たかじん「そんで、佐々木さんはね、京都に山田っていうパン屋さんがあるんやけど、そこのパンしかアカンねんね。パン無くなったら止めんねん」
ざこば「こだわり持ってはったんやね」
たかじん「またね、この山田のパンがね、美味いのよ」
ざこば「山田のパン、また、こしらえたらええのにな」
たかじん「でもね、山田のパンもね、この番組のために作ってくれはってん、もう辞めてはんのに」
たかじん「僕の人生と青春を決めてくれたのは、これやもん。だから、僕は、これ以外のハンバーガーは、死ぬまで絶対食べへんねん」
(中略)
たかじん「。。。会いたかったな。」
ざこば「食べてええか」
たかじん「食べて」
女性アナウンサー「再現していただきました、、、」
たかじん「これがね、僕の、自分の青春のね」
たかじんがハンバーガーを食べて、笑顔で中村さんと握手
たかじん「これ、これ。この味やで」
女性歌手「何も掛けなくても美味しい」
たかじん「他のハンバーガーが嫌いっていうわけやなくて、僕にとってのハンバーガーっていうのは、この味やねん。パンってこんなんやってん」
辻本「香ばしいですね」
たかじん「そうやろ、なんかアメリカの味するやろ」
辻本「します」
女性アナウンサー「たかじんさん、実は、もうお一方から、」
たかじん「もう、(やめて。)頼むわ」
女性アナウンサー「もうお一方からメッセージを頂戴しております」
VTRナレーション「たかじんに色んなことを教えてくれた佐々木さんは、たかじんにとってハンバーガーと同様、いやそれ以上に忘れられない存在です。その佐々木さんは、残念ながら、三年半前に亡くなり、さらにたかじんがお世話になった、奥さんの良子さんも二年前に亡くなられました。しかし、その当時のことを何度も聞かされたという娘の加奈子さんが二人のことを語ってくれました」
たかじん「ええ?」
VTR「たかじんさん、こんばんわ。娘の加奈子です。(中略)父からは色んなこと聞いております。『アホみたいに食べるよる、あいつはビールとハンバーガーばっかりや』っていつも言ってました。それでブクブク太って。『むちゃくちゃやった』って。(言ってました)あのよくテレビでたかじんさんが、色んなところ、飲み歩く、飲んだらすぐ他の店に行くって何軒も何軒もハシゴするっていう話をよくたかじんさんがテレビで言っているじゃないですか。あれ、お父さんがそう人やったんで、『俺があんな風にさせたんかな』って」
たかじん「そうや!そうや、お父さんや!」
VTR「『弟みたいに。。。かわいい』。。そういうのがあるみたいで、色んな話は聞いてました。(インタビュア「お母様とは」)ええ、お母さんの方が、お店で長く一緒やったんで、お母さん、一緒に歌唄ったりしてたみたいで、『もっと綺麗な声やった』って。『こんなきたない声じゃなかった』ってお母さん言ってましたけど。『ほんまに綺麗な声やったんや』って言ってました。(インタビュア「さっきから見せてもらってますけど、たくさんの写真残ってますね」)そうですね、大事に、きちんと袋に入れて。(インタビュア「その手帳は」)そうですね、私も亡くなってから見たんですけど、これがお父さんが普段使っていたビジネス手帳で、色々目標とか書いてあるんですけど、そこに私たちの(家族)写真と、一緒にたかじんさんとお店で一緒に写っている写真も入っていたんですね。よほど大切に思っていたのかと思って。私もああっと思って見たんです。(インタビュア「これはお亡くなりになるまで持っていた手帳ですか?」そうです、そうです。大切な、お父さんにとって大切な人。。」
(VTR終わって)
女性アナウンサー「たかじんさん、これ娘の加奈子さんから預かった。。」
たかじん「もう許してください。本当に。。」
たかじん「なんで死ぬか。。生きてはったら、ちょっとくらい力になれたのに。。なんで死ぬかな。。すいません。。」